以前ご紹介した『マンガでわかる認知行動療法』は、認知行動療法の考え方の全体像を「理解する」ための一冊でした。今回ご紹介する『こころが晴れるノート』は、その学びを「自分で実践する」ための一冊です。
同じ大野裕先生の著書ですが、本書は「読む本」ではなく「書き込む本」。認知行動療法の考え方を基にしたセルフワークブックとして設計されており、自分の手を動かしながら、自分自身の思考パターンと向き合っていきます。
『マンガでわかる認知行動療法』で学んだことを、実践に移す
『マンガでわかる認知行動療法』では、「ポジティブシンキングが必ずしも正しいとは限らない」「大切なのはバランスの取れた現実的な見方」という大野先生の教えをお伝えしました。
本書はその考え方を、6つのモジュール(実践領域)に分けて、段階的に練習できるようになっています。ストレスへの気づき、問題の整理、自動思考の発見、バランスの取れた考え方の練習、問題解決、人間関係の改善、そして自分の根底にある思い込み(スキーマ)への挑戦まで。約130ページとコンパクトですが、認知行動療法の主要な技法がしっかり網羅されているため、認知行動療法の考え方を自分のものとしていくのに、うってつけの教材となることでしょう。
ただし、いきなりこの本を開く前に知ってほしいこと
ここで、じぶんみらいスタジオとしてお伝えしたい大切なことがあります。
認知行動療法は世界中で効果が実証された心理療法です。しかし近年の研究では、メタ認知能力が不十分な状態では、認知行動療法の効果が十分に発揮されないことが明らかになってきています。
メタ認知とは、「自分が今どう考えているかを、一歩引いて観察する力」のこと。たとえば「自分はまた極端な考え方をしているな」と気づける力です。
認知行動療法の核となる「自動思考に気づく」「認知の歪みを見つける」「バランスの取れた見方を探す」──これらはすべて、自分の思考を客観視するメタ認知の力があってこそ機能します。メタ認知が育っていない段階で認知行動療法の考え方に基づくワークに取り組んでも、自分の思考を正確に捉えられず、ワークが形だけのものになってしまう可能性があるのです。
だからこそ、じぶんみらいスタジオではメタ認知の力を育てることを非常に重視しています。
じぶんみらいスタジオの本の紹介シリーズとの「つながり」
これまでご紹介してきた本は、実はこの「メタ認知」を多角的に育てるための布石でもありました。
齋藤孝先生の『呼吸入門』では、呼吸を意識的に整えることで「身体の状態に気づく力」を養いました。続く『気の力』では、自分の「気」の状態や場の空気を感じ取る力──つまり自分と周囲の関係を客観的に観察する力を学びました。
天外伺朗さんの著書シリーズ、とりわけ『鳥の瞑想で開く第三の視点とメタ認知の奇跡』は、まさに「鳥の目」で自分を俯瞰する──メタ認知そのものをテーマにした一冊でした。
そして黒川順夫先生の『不安こそ宝物』。森田療法の核心である「不安をあるがまま受け入れる」という姿勢は、不安を排除しようとするのではなく、まず「自分が今不安を感じている」という事実を客観的に認めることから始まります。これもメタ認知の実践にほかなりません。
黒川先生ご自身が、森田療法の本を読みあさることで症状が改善し、「読書療法」を提唱されるに至ったという経験。本を読むことで自分を知り、心が整っていく──その過程で育まれるのもまた、メタ認知の力です。
つまり、こうした「土台づくり」の読書を経たうえで『こころが晴れるノート』に取り組むことで、認知行動療法の効果は格段に高まるのです。
この本の使い方のおすすめ
本書は自分のペースで進められるのが最大の魅力です。全部を一度にやる必要はありません。6つのモジュールの中から、今の自分に合ったものを選んで取り組めます。
特に「3つのコラム」「5つのコラム」「7つのコラム」と段階的にステップアップしていくコラム法のワークは、自分の思考を「見える化」する力を着実に伸ばしてくれます。
「自分で書くのは難しそう」と感じる方は、まず『マンガでわかる認知行動療法』で全体像を理解してから取り組むとスムーズです。そして、書くことに行き詰まったときは、無理をせず、呼吸を整えて身体の状態を感じることに立ち返ってみてください。それ自体が、メタ認知のトレーニングになっています。
おすすめの読書ステップ
じぶんみらいスタジオがおすすめする「メタ認知→認知行動療法」の読書ステップを整理すると、次のようになります。
Step 1:身体の土台を整える → 齋藤孝『呼吸入門』『気の力』
Step 2:メタ認知の力を育てる → 天外伺朗『鳥の瞑想で開く第三の視点とメタ認知の奇跡』
Step 3:不安との付き合い方を知る → 黒川順夫『不安こそ宝物』
Step 4:認知行動療法を理解する → 大野裕『マンガでわかる認知行動療法』
Step 5:認知行動療法を実践する → 大野裕『こころが晴れるノート』 ← 今回の一冊
もちろん、どこから始めても構いません。でも、この順番で読み進めていくと、一冊ごとに自分の内側を観察する力が深まり、認知行動療法のワークに取り組むときの「効きが違う」はずです。
📖 『こころが晴れるノート』大野裕 著 / 創元社
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