10月3日、日本陸上競技連盟は、大阪府の代表に選ばれた中高生8人について、U16の全国大会への出場を認めない判断を、あらためて示しました。申込をまとめて行う大阪中体連が、締切を取り違えていたためです。
前回のコラム「締切は、動かなかった」では、この出来事を入り口に、自分の手では動かせないものについて書きました。
陸連の判断が示された直後に書いたものです。読み返すと、まだ動いている話に、少し早く区切りをつけてしまったところもあったように思います。
ただ、あのとき書きたかったのは、やりきれない思いを抱えている8人の生徒さんと、大小の違いはあっても、同じように動かせないと思われるようなものの前に立っている人たちへの、エールでした。
その後も、大人たちは動いています。
吉村知事は要望書を出し、「教育的観点」から救済を求めました。大阪中体連は10月5日、選手や保護者に向けた説明会を開いて謝罪し、日本スポーツ仲裁機構に緊急仲裁を申し立てたと報じられています。
説明会では、保護者から「なぜ一回も(エントリーを)行なわなかったのか」「大人の怠慢・初動対応の誤りが、全部がおかしなところに行ったと思う」と、怒りの声が上がったと報じられています。ある保護者は、子どもが「自分の部屋で、日本陸連の発表を一人で読んで、泣いていたそうです」と語っています。
保護者が怒るのは、当然のことだと思います。
10月7日には、大阪中体連の陸上競技部が、ホームページに報告書を載せました。「本件の責任はすべて私たち専門部にあり、懸命に努力を重ねて代表権を掴んだ選手の皆さんには何の責任もありません」。陸連の見解は変わらず、現時点では厳しい状況にあるとしたうえで、いまも出場機会の確保に向けて対応を続けている、と書かれています。
この出来事を追いながら、ひとつの問いが浮かびました。
あきらめることと、流れに身を任せることは、同じなのだろうか――。
この問いは、ニュースを見ている私たち一人ひとりに向けたものです。
どちらも、何かを手放すことに変わりはありません。外から見れば、区別がつかないこともあります。
ソニーで、CDやAIBOの開発に携わった科学者に、天外伺朗さんという人がいます。天外さんは『運命の法則』などの著書で、人生には「流れ」があり、頭で考えて無理に進むより、その流れに乗ることの大切さを説いています。
流れに乗るコツは、「はからい」を手放すこと。はからいとは、自我によるコントロールや執着のこと。「こうあるべきだ」と、結果を自分の思い通りに運ぼうとする、計算や思惑です。必死に歯を食いしばるより、楽しく没頭すること。天外さんは、そうも語っています。
「流れに乗る」と聞くと、何もしないで任せることのように聞こえるかもしれません。
では、手放すのは、何なのでしょう。
手放すのは、はからい。手は、動かしつづける。
手を止めるのが、あきらめること。手を動かしながら、はからいを手放すのが、流れに身を任せること。
前回のコラムで書いた「動かせないもの」と「動かせるもの」に重ねると、結果は、動かせない側にあります。自分の手は、動かせる側にあります。
その先にあるものを、人は、運命と呼んできたのかもしれません。
報告書には、「できうる取組についても進めております」ともありました。陸連の判断が示されたあとも、大人たちは、それが覆るよう、やれるだけのことをやろうとしているように見えます。やれることが、まだ残っているのだと思います。
学生のうちは、締切に遅れても、誰かが別の道を探してくれることがあります。社会に出ると、動かないものの前で、もう一本の道を探すのも、手を動かしつづけるのも、自分自身になっていきます。
動かないものの前に立ったとき、あなたの手で、まだやれることは、何だろう――。
そして、手放してもいいものは、何だろう――。
*
このコラムを書いている10月8日の時点で、大会の開幕はまだ先です。8人の生徒さんに出場の機会が得られることを、心から願っています。
天外さんの本は、以前このサイトでも紹介しています。末尾にも置いておきます。
みらいを紡ぐ、物語。
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関連書籍
それぞれの本のくわしい紹介は、以前の記事にまとめています。
流れに乗る、ということ
運命の法則 「好運の女神」と付き合うための15章
天外伺朗 著/飛鳥新社
人生の流れと、とらわれを手放すことを、科学者の目で解き明かした一冊です。天外さんの考え方の原点にあたります。
運命のシナリオ 宇宙の流れに乗れば奇跡が連続する
天外伺朗 著/明窓出版
『運命の法則』の考え方を、やわらかい文体と具体的な話でたどれる一冊です。流れに身を任せた先にある運命を、どう受け取るかの手がかりになります。
はからいに、気づく
宇宙の根っこにつながる瞑想法
天外伺朗 著/飛鳥新社
流れを頭で知るだけでなく、瞑想で体感するための一冊です。
「鳥の瞑想」で開く第三の視点とメタ認知の奇跡 たった10分の積み重ねが人生を変える
天外伺朗 著/明窓出版
上空の鳥の目で自分を眺める瞑想です。結果を思い通りにしようとしている自分にも、気づけるようになります。
※ Amazonのアソシエイトとして、じぶんみらいスタジオは適格販売により収入を得ています。
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